市区町村士会の特色を生かして
森實 徹
株式会社フルーション 地域支援事業部副部長
近年、大地震や台風といった災害が各地で頻発し、多くの被災者を生み出してきました。これら被災者に対して、DMATなどの災害派遣医療チームが発足、派遣され、支援を行なってきました。
そんな中、被災者には、怪我をされた方や高齢者、障害者なども含まれることなどから、被災者の健康・生活を保つためにリハビリテーションの専門性を以って貢献するJRATが立ち上げられ、実績を残してきました。しかしながら、被災を免れた地域からの限られた人数の応援であるため、東日本大震災などといった大規模な災害になればなるほど、各地域へ潤沢に人を派遣することが困難となることが予想されます。
そういった際には、被災地で暮らす、あるいは働くリハビリテーションの専門職が自ら立ち上がって、JRATなどの派遣チームと協力しながら、地域に貢献する必要があります。
吹田市理学療法士会は、地域貢献の一つとして2018年に吹田市と「災害時の避難所における人的支援に関する協定」を結びました。この協定により、発災時には、避難所における生活不活発の予防と対策調整といった活動を行う必要があります。
ただ、支援活動において、支援する者も被災者であること、そのために、スムーズな支援が行えるような仕組みを構築したり、日々の活動が重要であると考えています。
当会では、支援活動に備えて昨年より、会員に向けた研修会を開催しています。
研修としては、吹田市の防災の取り組みやJRATの活動を通しての避難所での理学療法士の専門性の活かし方などを学んでいただいていますが、取り組みはまだ緒に就いたばかりです。会員の誰もが実際の現場で対応できるようになるためには、避難所の場所や立ち上げまでの流れを理解しておくことや避難所の運営をする方との連携をとりながら、実際の支援に備えること、地域住民への啓発活動など日常的な取り組みや準備は、多岐にわたります。
シンポジウムでは、そういった課題をお示しした上で方策について吹田市理学療法士会の取り組みを紹介するとともに、皆様からの意見も頂戴して、災害に対して行える理学療法士の支援の在り方などについて考える機会にしたいと思います。
そんな中、被災者には、怪我をされた方や高齢者、障害者なども含まれることなどから、被災者の健康・生活を保つためにリハビリテーションの専門性を以って貢献するJRATが立ち上げられ、実績を残してきました。しかしながら、被災を免れた地域からの限られた人数の応援であるため、東日本大震災などといった大規模な災害になればなるほど、各地域へ潤沢に人を派遣することが困難となることが予想されます。
そういった際には、被災地で暮らす、あるいは働くリハビリテーションの専門職が自ら立ち上がって、JRATなどの派遣チームと協力しながら、地域に貢献する必要があります。
吹田市理学療法士会は、地域貢献の一つとして2018年に吹田市と「災害時の避難所における人的支援に関する協定」を結びました。この協定により、発災時には、避難所における生活不活発の予防と対策調整といった活動を行う必要があります。
ただ、支援活動において、支援する者も被災者であること、そのために、スムーズな支援が行えるような仕組みを構築したり、日々の活動が重要であると考えています。
当会では、支援活動に備えて昨年より、会員に向けた研修会を開催しています。
研修としては、吹田市の防災の取り組みやJRATの活動を通しての避難所での理学療法士の専門性の活かし方などを学んでいただいていますが、取り組みはまだ緒に就いたばかりです。会員の誰もが実際の現場で対応できるようになるためには、避難所の場所や立ち上げまでの流れを理解しておくことや避難所の運営をする方との連携をとりながら、実際の支援に備えること、地域住民への啓発活動など日常的な取り組みや準備は、多岐にわたります。
シンポジウムでは、そういった課題をお示しした上で方策について吹田市理学療法士会の取り組みを紹介するとともに、皆様からの意見も頂戴して、災害に対して行える理学療法士の支援の在り方などについて考える機会にしたいと思います。
- 略歴
-
1986年 市立吹田市民病院 入職
2004年 関西医科専門学校 入職
2010年 神戸国際大学 入職
2014年 株式会社フルーション 入職 - 資格
- 介護支援専門員
- 社会的活動
-
公益社団法人 大阪府理学療法士会 北支部代議員
吹田市理学療法士会 災害時対策委員会 - 執筆
- 『神経筋障害理学療法学テキスト』小脳性運動失調の理学療法:南江堂(2018)
(公社)大阪府理学療法士会の活動経緯と組織体制 人材の育成と確保
松岡 雅一
株式会社 リハステージ 訪問看護ステーション リハステージ
大阪府理学療法士会(以下、府士会)の災害対策に関する活動は2010年からの準備期間を経て、正式には2013年から開始しています。東日本大震災がきっかけとなり、当時会長の大工谷先生が特別委員会として諮問し、当時副会長の尾谷先生が長となって設置された「災害時支援対策特別委員会」が活動の始まりとなります。
その後、災害時に被災地(者)への支援活動、大阪が被災した場合の受援活動に協力いただける府士会員(以下、派遣要員)の育成と増員を主目的とし、継続的に活動してきました。府士会内の組織としては毎年、特別委員会を設置してきましたが、2019年度からは府士会の組織改編に合わせて常設の部「職能局 災害対策部」とし、特別委員会の活動を引き継ぎました。
また医師を始め他職種、他団体との連携や関係構築も並行して進め、日本理学療法士協会が加入している「大規模災害リハビリテーション支援関連団体協議会(JRAT)」の地域レベルの組織として「大阪府大規模災害リハビリテーション支援関連団体協議会(大阪JRAT)を2016年に設立しました。
その結果、熊本地震、大阪府北部地震、平成30年西日本豪雨災害では派遣要員により活動することができました。
2019年度には福祉的支援領域から大阪府との協定締結に至っています。また吹田市理学療法士会では、吹田市と発災時の避難所支援についての協定を結び、市区町村士会単位での活動も現実的となってきています。
一方で府士会員や理学療法士における災害リハビリテーションの認知度はまだまだ低い状況です。災害リハビリテーションは理学療法の職能領域としては地域リハビリテーションの一環と位置付けることができます。シンポジウムでは、地域リハビリテーションの視点から今後も中長期的な目標となる派遣要員の増員、地域ごとの行政や他職種(団体)との連携についてご説明いたします。そして、そのためには平時の地域における府士会員の先生方の理学療法業務が基盤であり、かつ重要であることについてもお伝えいたします。また病院や施設にご勤務されている府士会員の先生方におかれましても、所属先での災害対策や防災について共有いただける内容があると存じます。是非、お気軽に当シンポジウム会場へお越しいただければ幸甚です。
その後、災害時に被災地(者)への支援活動、大阪が被災した場合の受援活動に協力いただける府士会員(以下、派遣要員)の育成と増員を主目的とし、継続的に活動してきました。府士会内の組織としては毎年、特別委員会を設置してきましたが、2019年度からは府士会の組織改編に合わせて常設の部「職能局 災害対策部」とし、特別委員会の活動を引き継ぎました。
また医師を始め他職種、他団体との連携や関係構築も並行して進め、日本理学療法士協会が加入している「大規模災害リハビリテーション支援関連団体協議会(JRAT)」の地域レベルの組織として「大阪府大規模災害リハビリテーション支援関連団体協議会(大阪JRAT)を2016年に設立しました。
その結果、熊本地震、大阪府北部地震、平成30年西日本豪雨災害では派遣要員により活動することができました。
2019年度には福祉的支援領域から大阪府との協定締結に至っています。また吹田市理学療法士会では、吹田市と発災時の避難所支援についての協定を結び、市区町村士会単位での活動も現実的となってきています。
一方で府士会員や理学療法士における災害リハビリテーションの認知度はまだまだ低い状況です。災害リハビリテーションは理学療法の職能領域としては地域リハビリテーションの一環と位置付けることができます。シンポジウムでは、地域リハビリテーションの視点から今後も中長期的な目標となる派遣要員の増員、地域ごとの行政や他職種(団体)との連携についてご説明いたします。そして、そのためには平時の地域における府士会員の先生方の理学療法業務が基盤であり、かつ重要であることについてもお伝えいたします。また病院や施設にご勤務されている府士会員の先生方におかれましても、所属先での災害対策や防災について共有いただける内容があると存じます。是非、お気軽に当シンポジウム会場へお越しいただければ幸甚です。
- 略歴
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2000年 医療法人 協和会 協和会病院
2006年 医療法人 盈進会 岸和田盈進会病院
2015年(株)リハステージ 訪問看護ステーション リハステージ 入職 - 資格
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認定理学療法(地域理学療法)
地域ケア会議推進リーダー地域ケア会議推進リーダー
介護予防推進リーダー
回復期セラピストマネージャー 大阪府災害派遣福祉チーム隊員 - 社会的活動
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公益社団法人 大阪府理学療法士会 事務局組織部部長・保健福祉局保健福祉相談部部長
公益社団法人 大阪府理学療法士会 災害時支援対策特別委員会委員(長)
公益社団法人 大阪府理学療法士会 ブロック局担当理事・職能局担当理事
公益社団法人 日本理学療法士協会 代議員
大阪府大規模災害リハビリテーション支援関連団体協議会 事務局員
一般社団法人 日本災害リハビリテーション支援協会 (JRAT) 研修企画委員 大阪府理学療法士連盟役員
日本理学療法士連盟代議員 - 執筆
- 災害時リハビリテーション支援活動の課題-3つの異なるフェーズでの活動経験から-:理学療法学(2019)
理学療法士による災害支援活動について
森川 明
医療法人東和会 第二東和会病院リハビリテーション部
【はじめに】 演者は平成23年以降、災害時に被災地でリハビリテーション支援活動を行ってきたので、その経験と今後の課題を報告する。
【演者の災害支援活動】 東日本大震災(平成23年発災)の発災1ヶ月半後と半年後に個人ボランティア(理学療法士の団体による公募)として災害支援活動に従事した。熊本地震(平成28年発災)では発災2週間後に大規模災害リハビリテーション支援関連団体協議会(Japan Disaster Rehabilitation Assistance Team;JRAT)の一員として支援活動を行った。大阪府北部の地震(平成30年発災)では、発災直後は院内での応急対応を行い、翌日から大阪JRATの一員として周辺地域の支援活動を行った。
【フェーズによる支援活動の違い】
超急性期・急性期〜亜急性期:大阪府北部の地震では、まず、勤務先の院内での患者搬送や避難介助などを行った。その後は避難所を巡回し、日々変化する避難所の状況に応じた生活の質の改善やリハビリテーショントリアージ(リハビリテーション治療が必要か等の選別)を行い、地域リハビリテーション広域支援センターへ引き継いだ。
亜急性期:熊本地震では、保健師など他職種と共同して情報収集を行い、動作訓練や福祉器具の導入、避難所生活の質のさらなる改善を行った。
復旧・復興期:東日本大震災では、活動と参加を評価し、孤立対策のためのコミュニティ構築などの支援を実践した。
【派遣形態による支援活動の違い】 東日本大震災時は、個人ボランティアで参加した。そのため、個人でできる限りの活動を行ったが、共有できる情報は担当する被災者と保健師からのみであり、全体が見えないまま活動を終えた。そして、平成26年のJRAT結成以後は、大規模災害時の急性期からJRATによる組織的な支援活動が行われるようになった。
【理学療法士に求められること】 発災直後の勤務場所での避難誘導、避難所の環境改善や避難者の状況変化によって引き起こされる生活不活発病の対策、地域のリハビリテーション資源へ移行など、理学療法士として災害のあらゆるフェーズでの災害支援活動に関わった。災害リハビリテーション支援の必要性の啓発と支援活動ができる人材の育成が必要であることは論を俟たない。しかし、このような経験は頻繁にできるものではない。また、訓練のための教育プログラムもないので、災害支援を遂行できる人材も不足している。すなわち、大規模災害支援の教育プログラムの整備は早急に取り組まなければならない喫緊の課題である。
【演者の災害支援活動】 東日本大震災(平成23年発災)の発災1ヶ月半後と半年後に個人ボランティア(理学療法士の団体による公募)として災害支援活動に従事した。熊本地震(平成28年発災)では発災2週間後に大規模災害リハビリテーション支援関連団体協議会(Japan Disaster Rehabilitation Assistance Team;JRAT)の一員として支援活動を行った。大阪府北部の地震(平成30年発災)では、発災直後は院内での応急対応を行い、翌日から大阪JRATの一員として周辺地域の支援活動を行った。
【フェーズによる支援活動の違い】
超急性期・急性期〜亜急性期:大阪府北部の地震では、まず、勤務先の院内での患者搬送や避難介助などを行った。その後は避難所を巡回し、日々変化する避難所の状況に応じた生活の質の改善やリハビリテーショントリアージ(リハビリテーション治療が必要か等の選別)を行い、地域リハビリテーション広域支援センターへ引き継いだ。
亜急性期:熊本地震では、保健師など他職種と共同して情報収集を行い、動作訓練や福祉器具の導入、避難所生活の質のさらなる改善を行った。
復旧・復興期:東日本大震災では、活動と参加を評価し、孤立対策のためのコミュニティ構築などの支援を実践した。
【派遣形態による支援活動の違い】 東日本大震災時は、個人ボランティアで参加した。そのため、個人でできる限りの活動を行ったが、共有できる情報は担当する被災者と保健師からのみであり、全体が見えないまま活動を終えた。そして、平成26年のJRAT結成以後は、大規模災害時の急性期からJRATによる組織的な支援活動が行われるようになった。
【理学療法士に求められること】 発災直後の勤務場所での避難誘導、避難所の環境改善や避難者の状況変化によって引き起こされる生活不活発病の対策、地域のリハビリテーション資源へ移行など、理学療法士として災害のあらゆるフェーズでの災害支援活動に関わった。災害リハビリテーション支援の必要性の啓発と支援活動ができる人材の育成が必要であることは論を俟たない。しかし、このような経験は頻繁にできるものではない。また、訓練のための教育プログラムもないので、災害支援を遂行できる人材も不足している。すなわち、大規模災害支援の教育プログラムの整備は早急に取り組まなければならない喫緊の課題である。
- 略歴
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2005年 大阪医専理学療法学科昼間部 卒業
2005年 医療法人東和会 入職
2020年 大阪医科大学大学院医学研究科 入学 - 資格
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3学会合同呼吸認定療法士
認定理学療法士(脳卒中) - 社会的活動
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公益社団法人 大阪府理学療法士会 代議員
日本離床学会評議員 - 執筆
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災害時リハビリテーション支援活動の課題-3つの異なるフェーズでの活動経験から-:理学療法学(2019)
実践!離床完全マニュアル2 寝たきりゼロへ進化中:慧文社(2018)