第32回大阪府理学療法学術大会

The 32nd Congress of Osaka Physical Therapy

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細胞の作られ方とその利用

仲野 徹
大阪大学大学院医学系研究科・病理学 教授
       生命機能研究科・時空生物学 教授
 我々のからだは、約37兆個、250~300種類の細胞によってできている。それらの細胞はたった一個の受精卵が発生・分化することによって作られたものである。
 細胞や組織、臓器はいくつかの方法で分類することができる。発生学的には、消化管や肝臓・膵臓といった内胚葉、筋肉や血液細胞のような中胚葉、神経と皮膚の外胚葉と、三つの胚葉に分類できる。また、組織学的に見ると、上皮組織、筋組織、神経組織、結合組織の四つがある。
 もうひとつ、細胞の増殖能によっても三つに分けることができる。ひとつは、血液細胞や皮膚表皮、消化管粘膜上皮のように、常に産生され続ける臓器。次は、肝臓のように、通常の状態では安定であるが、肝切除のような場合には再生が可能な臓器。そして、神経や筋肉のように一旦傷つけられるとほぼ再生できない臓器である。このうちのひとつめ、血液細胞や皮膚の表皮には、幹細胞とよばれる細胞が存在し、その細胞が増殖、分化することによって、必要な細胞を常に供給し続けるのである。
 幹細胞とは、自己複製能と分化能をあわせもった未分化な細胞と定義される細胞である。幹細胞には、大きく二つの種類があって、ひとつは、造血幹細胞、皮膚表皮幹細胞、毛の幹細胞、消化管上皮の幹細胞といった、我々の体の中に存在する幹細胞で、組織幹細胞と呼ばれる。もうひとつは多能性幹細胞で、初期胚から樹立された胚性幹細胞(ES細胞)やiPS細胞(人工多能性幹細胞)のように、ほとんどすべての種類の細胞に分化することができるという性質を持っている。
 このような幹細胞を利用した医学が再生医学である。具体的には、幹細胞あるいはそれに準じる細胞を体外で増殖させ、患者に移植することにより治療しようという方法である。組織幹細胞の場合は、容易ではないが、体外で増殖させて移植すればよい。しかし、多能性幹細胞の場合は、そのまま移植するとランダムな発生・分化が生じ、三胚葉すべてを含む奇形腫という腫瘍を作ってしまう。なので、一旦、望みの細胞へと試験管内で分化誘導することが必要である。
 今回の講演では、細胞の分化とは何かから始め、幹細胞およびそれを利用した医学、そして、再生医学の将来と限界についてお話する予定にしています。
略歴
1981年 大阪大学医学部医学科 卒業、内科医として勤務
1984年 大阪大学医学部・バイオメディカルセンター腫瘍病理部門 助手
1989年 ヨーロッパ分子生物学研究所(EMBL) Visiting Scientist
1990年 京都大学医学部・医化学第一教室(本庶佑教授) 講師
1995年 大阪大学微生物病研究所・遺伝子動態研究部門 教授
2004年 大阪大学大学院医学系研究科・病理学 教授
大阪大学大学院生命機能研究科・時空生物学 教授
2012年度 日本医師会医学賞 受賞
2014年4月~2016年3月
大阪大学大学院生命機能研究科 研究科長
執筆
エピジェネティクス:岩波新書(2014年)
こわいもの知らずの病理学講義:晶文社(2017年)
(あまり)病気をしない暮らし:晶文社(2018年)
仲野教授のそろそろ大阪の話をしよう:ちいさいミシマ社(2019年)
生命科学者たちのむこうみずな日常と華麗なる研究:河出文庫(2019年)
からだと病気のしくみ講義:NHK出版(2019年)
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