第2回生涯学習研修集会

2nd Conference of the Training for Lifelong Learning

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脳とこころから考えるペインリハビリテーション

森岡 周
畿央大学大学院 健康科学研究科 主任・教授
講演概要
今日、慢性疼痛患者では、前頭前野の機能不全に基づく下降性疼痛抑制機能の破綻が生じていることが示唆されている。こうした神経科学的見解は、従来からの恐怖‐回避モデルといった心理学的見解と相性が良い。これは疼痛に対して破局的思考を有し、不安が助長されることで回避的行動を伴うと疼痛が慢性化するといったモデルである。本講演では回避行動、不安、抑うつ、破局的思考、社会的排斥等と慢性疼痛の因果関係に対して説明し、対象者の認知の歪みを是正するための患者教育と運動療法のハイブリッド介入の重要性を説きたい。一方、運動器疾患であっても疼痛が長引くと患肢の不使用が続き、それにより脳内の身体知覚に関わる領域が縮小する。この現象は脳卒中後の学習性不使用のメカニズムに類似している。ゆえに、疼痛患者に対してニューロリハ戦略が用いられることがある。本講演ではメカニズム・ベースド・ニューロリハをいくつか紹介する。
受講者へのメッセージ
急性期と慢性疼痛のメカニズムは明らかに異なります。本講演を通じて、慢性疼痛の脳内(こころ)メカニズムの理解が促進されるでしょう。メカニズムを理解した上で、臨床意思決定ができるよう、講演内容を構成したいと思っています。
略歴
【学歴・職歴】
1992年 高知医療学院理学療法学科卒業
1992年 近森リハビリテーション病院理学療法士
1997年 フランス・サンタンヌ病院留学
2001年 高知大学大学院教育学研究科修士課程修了 修士(教育学)
2004年 高知医科大学大学院医学系研究科博士課程神経科学系専攻修了 博士(医学)
2007年 畿央大学大学院健康科学研究科主任・教授 現在に至る
2013年 畿央大学ニューロリハビリテーション研究センター長 現在に至る
2014年 首都大学東京(現・東京都立大学)大学院客員教授 現在に至る
【受賞歴】
第38回日本理学療法学術大会学術奨励賞(2004年)
第17回理学療法ジャーナル賞(2006年)
(社)奈良県理学療法士会学術奨励会長賞(2007年)
第52回日本理学療法学術大会最優秀賞(2018年)
【主な社会・学会活動】
(公社)日本理学療法士協会日本神経理学療法学会副代表運営幹事
(一社)日本ペインリハビリテーション学会副理事長
(一社)日本運動器疼痛学会代議員
日本ニューロリハビリテーション学会評議員
日本学術振興会科学研究費委員会専門委員 歴任
【主著(単著・編著を抜粋)】
リハビリテーションのための脳・神経科学入門第2版(協同医書出版社)
リハビリテーションのための認知神経科学入門(協同医書出版社)
リハビリテーションのための神経生物学入門(協同医書出版社)
脳を学ぶ -「ひと」とその社会がわかる生物学-(協同医書出版社)
身体運動学-知覚・認知からのメッセージ-(三輪書店)
理学療法MOOK16脳科学と理学療法(三輪書店)
ペインリハビリテーション(三輪書店)
イメージの科学-リハビリテーションへの応用に向けて−(三輪書店)
機能障害科学入門(神陵文庫)
標準理学療法学 神経理学療法学第2版(医学書院)
発達を学ぶ-人間発達学レクチャー-(協同医書出版社)
コミュニケーションを学ぶ(協同医書出版社)
身体性システムとリハビリテーションの科学2身体認知(東京大学出版会)
【学術論文】
330編以上(うち査読付き英文原著110編以上)

ペインリハビリテーションにおける慢性疼痛の予防戦略

沖田 実
長崎大学 生命医科学域(保健学系) 教授
講演概要
 2018年3月に「慢性疼痛治療ガイドライン」が発刊され,本邦においてもようやく慢性疼痛の治療指針が示された.しかし,依然として慢性疼痛の新規発生率は高く,一旦発生するとその痛みは5~15年と極めて長期間持続するという.つまり,慢性疼痛対策は治療戦略の確立だけでは不十分で,発生予防も含めたマネジメント戦略の確立が重要である.そして,国際疼痛学会は2020年を“痛みの予防(Prevention of Pain)”に関するGlobal Yearと位置付け,全世界をあげて痛み,特に慢性疼痛の予防に取り組むことを明言している.慢性疼痛の予防の概念は,予防医学の概念と同様に一次予防から三次予防に区分され,一次予防は急性痛を惹起する疾病・傷害の予防,二次予防は急性痛の増悪・遷延化の予防,つまり慢性疼痛の発生予防,三次予防は慢性疼痛による健康やQOL低下の予防とされている.そこで,本講演ではこの概念を踏まえ,ペインリハビリテーションとして慢性疼痛の予防戦略に関して情報提供する予定である.
受講者へのメッセージ
 昨年の世界理学療法の日のキャンペーンテーマが“慢性疼痛”であり,慢性疼痛は全世界共通の問題であるとともに,理学療法士が活躍できる領域であることが周知されました.ただ,本邦では卒前教育の問題などもあり,慢性疼痛に対峙できる理学療法士が少ないのは事実です.是非,リカレント教育として疼痛学を学び,日々の臨床に役立てていきましょう.
略歴
【学歴】
1989年3月 長崎大学医療技術短期大学部理学療法学科 卒業
1997年3月 長崎大学大学院経済学研究科修士課程修了 修士(経済学)(長崎大学修(経)第4号)
1997年4月 長崎大学大学院医学系研究科(内科学第一教室)研究歴認定(2004年3月まで)
2004年1月 博士(医学)(長崎大学)(長崎大学博(医)乙第1706号)
【職歴】
1989年4月 日本赤十字社長崎原爆病院 リハビリテーション科(理学療法士)勤務
1992年6月 長崎大学医療技術短期大学部 助手
2001年10月 長崎大学医学部 助手
2004年4月 星城大学リハビリテーション学部 助教授
2007年4月 西九州大学リハビリテーション学部 准教授
2007年10月 長崎大学大学院医歯薬学総合研究科 理学療法学分野 教授(現在に至る)
2017年 4月 長崎大学生命医科学域(保健学系)教授(現在に至る)(教員組織の改組に伴う所属先の変更)
【賞罰】
2005年5月 第39回日本理学療法学術大会優秀賞受賞
【学会活動】
・(一社)日本ペインリハビリテーション学会;副理事長
・(一社)日本運動器疼痛学会;理事,教育委員会委員長
・(公社)日本理学療法士協会;コアカリキュラム検討委員会委
・日本結合組織学会;評議員
【主な著書】
・ペインリハビリテーション入門,三輪書店(2019).
・エンド・オブ・ライフケアとしての拘縮対策-美しい姿で最後を迎えていただくために,三輪書店(2014)
・関節可動域制限第2版-病態の理解と治療の考え方,三輪書店(2013)
・Pain Rehabilitation-ペインリハビリテーション,三輪書店(2011)
・機能障害科学入門,九州神陵文庫(2010)
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